2017年にダイヤモンド社より刊行された
橘 玲(たちばな あきら)氏の『幸福の「資本」論』
を紹介していこうと思う。
こんな人にオススメ👀
・人生や自分にとっての幸福の方向性が迷子
・もっと幸せになりたいけど漠然としている
・人間関係の悩みがある
個人的にはあまり推奨したくないのだが、要約サイト(出来れば、ご自身で1からきちんと読んだ方が良い)や、youtubeで岡田斗司夫さんが取り上げていたり、有名な書籍である。
あらすじ
「3つのインフラ」と「人生の8つのパターン」
幸福になるための土台には「金融資産、人的資本、社会資本」という3つのインフラがあるという考え方をはじめとし、そのインフラの有無によって人生は8つのパターンに分けることが出来るという。
例えば
「貧困」=金融資産❎️、人的資本❎️、社会資本❎️(何も持っていない)
「退職者」=金融資産⭕️、資本❎️、社会資本❎️(退職金有、仕事なし、所属コミュニティなし)
など、他には「ソロ充」「プア充」「リア充」「旦那」「お金持ち」。そしてすべてを持つ「超充」。
①金融資本(自由)
これは言うまでもない。ちなみに資本というのは「富を生み出すちから」とのこと。
②人的資本(自己実現)
自分自身を労働力とし、報酬を得ること。働くこと・仕事とする。
③社会資本(共同体=絆)
- 愛情空間(もっとも大切な家族や恋人などとの関係)
- 友情空間(愛情空間の周りにある、親しい友人関係)
- 貨幣空間(さらにその周りにある、貨幣を通じて繋がる世界のこと)
この3つの世界に分けられる。
さらに、「愛情世界」「友情世界」の2世界においては、友達のいる学校であるようなイジメや会社のパワハラ・過労死など「敵味方」の殺伐とした世界があるという。
そして著者は言う。
「幸福」は社会資本からしか生まれない
『幸福の「資本」論』P184より引用
幸福の土台設計の提案
さらに著者は以下のように書籍のテーマを掲げており、それを丁寧に分析していく1冊となっている。
『人生を支える3つの資本=資産によって、幸福の条件である自由、自己実現、共同体=絆が決まります。そこにどのような家を建てるかは、一人ひとりが自らの価値観にもとづいて決めればいいことです。これが本書の基本的な主張です』
『幸福の「資本」論』P24より引用
幸福の条件を「設計できるもの」「設計できないもの(運命)」に切り分ける必要はあるが、
自分にとっての幸福をまず定義すること。
そして、その土台を強固にしなければ、どんなに幸福を演じても脆く崩れ去りやすいものになってしまうことは想像に容易い。
だからこそ、漠然としていたり、一般的と言われるような他人に軸がある「幸福」ではなく
「自分だけの幸福」のために最適なポートフォリオを組む必要があるのである。
感想
非常にロジカルでわかりやすく、私自身も賛同できる点の多い内容でした。
書籍の中では、過労死や貧困といったネガティブな内容もそこそこ多く、むずかしい部分もあるものの、見失いがちな「人生の方向性」を再確認するうえで有益な1冊だと思います。
その中でも私が一番、考えさせられたのは社会資本(共同体=絆)の部分です。
「友だちのポートフォリオ」を組み直す
書籍の中には、友達関係の核にあるのは「平等体験」というくだりがありましたが、
私たちのような子なし主婦は、子育てという「平等体験」を持つことが叶いません。
かといって未婚・非婚女性のように恋愛を謳歌し、旅行に美容にときらびやかな生活というわけでもありません。(当然、彼女たちにもそれぞれ悩みはあるのも分かっていますよ!)
そして、同年代の既婚女性たちの大半は子育て中であり、それはとてもとても大変なもの。
そんな彼女たちの話題の大半が子育てになってしまうことも、頭では仕方ないとは理解しています。
それでも職場で子どもの話しかしない人間関係や、子どもの有無を基にマウントを取ってくる知人など。無神経な親戚。子育ての話題に入ることが出来ず、肩身の狭い思いをする。
逆に、あからさまに気を使わせてしまって気まずいときも…。
こういった関係にストレスを感じたことは少なくないはずです。
でも、私たちの周りには、私たちが本当に悩んでいるときにそばにいてくれた家族や、一緒にいると楽しい気持ちになれる友人がいたはずです。
私も決して多くはありませんが、今でも連絡を取り合い仲良くしている友人たちがいます。
その中には、もちろん複数の子持ちの友人もいれば、独身で趣味に邁進しているような友人も。
実親とは上手くいきませんでしたが、不妊治療が辛いときに何も言わず見守ってくれていた義父母。
子供の頃から見守っていてくれた長兄も辛抱強く、私の不妊治療中の弱音を受け止めてくれました。
これは「平等体験」の関係にない人間とも、ポジティブな関係が築けているとは言えないでしょうか。
それを踏まえて、作中にあった「強いつながりを最小化」まではいきませんが、
「自分にとって幸福を感じられる人間関係を意識的に選ぶこと」が私にとっては重要なようです。
もちろん、どうしてもネガティブな経験の方に人間は目を向けがちなものですし、「平等体験」はあるに越したことはないと思います。
私には一時、人間不信のような時期がありました。(今思うともう色々限界だったのでしょうね。)
でも、何も言わずに見守っていてくれるひとたちがいることに、もっと早く気付くべきでした。
今思えば、きっとそういう人の方が多かったのに。
また、本書には、「幸福や不幸も他人に伝染する」というデータが紹介されたこともあり、自分にとって不快な人間関係は整理して、幸福を移し合えるような「友だちのポートフォリオ」を組み直す有用性には膝を打ちました。
なんとなくは分かっていたことですが、言語化されると腑に落ちやすいものです。
「弱いつながりの強さ」を意識していく
そして今後意識していきたいと思ったことが「弱いつながりの強さ」について。
前述した通り人間不信気味に陥った私は、書籍の中で言うところの「ソロ充」になっていました。
それが悪いことだとは今でも思っていません。
でも、「弱いつながり」のひとに誘いを受けて出かけていった先で、新しい楽しみや出会いがあったのです。また、その中での出会いが未来どうなるか分かりませんよね。
それは老若男女、年齢を問わない広い世界があるのだと改めて認識する、良い刺激を受けた出来事でした。
そのため、私は「今そばにいてくれる大切な人たちを軸に、「弱いつながり」という広い世界とつながる関係が新たな視点や幸福感をもたらしてくれるもの」と信じて、社会資本を伸ばしていきたいと思っています。
おわりに
自己啓発本、『嫌われる勇気』がベストセラーになったことは記憶に新しく、日本人は幸福になろうとつながりを求めるものの、その結果として「常に他者の目を気にしなければ生きていけない社会や文化を作り上げてきた」ということもあって身動きが取りにくくなってしまいやすいのかもしれません。
だからこそ、土台固めを行い、自分自身の人生設計をしっかりと描くことが必要であり、他人の価値観や目線に振り回されることなく、自分にとっての幸福を追求していく。
その方向性を確認するうえで、間違いなく参考になる1冊だと思いました。
みなさんにとって大切な3つの資本はどれでしたか?
もっと詳しく読んでみて、ぜひ、ご自身の価値観と向き合って
考えてみてくださいね。